Pauson–Khand 反応は、アルケン、アルキン、金属カルボニル錯体からシクロペンテノンを簡便に合成出来る反応として天然物合成などに利用されています。しかしながら、非対称な置換基を持つアルキンを用いた場合、位置選択性の制御が困難であるという問題を抱えていました。即ち、アルキン末端の2つの置換基の立体的な嵩高さあるいは電子的性質に圧倒的に差がある場合は、ある程度位置選択性が制御出来ることが知られていました。しかしながら、2つの置換基が似たものでは制御出来ていませんでした。
今回、Fernàndez らはアルキニルボロン酸エステルを用いてPauson–Khand 反応を行った後、Suzuki-Miyaura Cross Couplingを行うことで、結果的に2置換非対称アルキンを用いてPauson–Khand 反応を行った生成物を位置選択性を完全に制御して合成することに成功しています。ボロン酸エステルの性質をうまく利用してPauson–Khand 反応に永らく存在していた問題の解決につなげた研究例だと思いました。今後、医薬品合成、天然物合成など幅広い応用が可能だと思います。
The Pauson–Khand reaction using alkynylboronic esters: solving a long-standing regioselectivity issue
T. León*, E. Fernàndez*
Chem. Commun. 2016, 52, 9363–9366.